さみしいオシドリ


 仲むつまじい夫婦を「おしどり夫婦」というように、とりわけつがいの象徴に見られるオシドリ。それがどうしたのだろう、ポツンといる。雄だけが。
 尾羽がオレンジ色、首まわりに赤いふさふさが付いていて、嘴も赤みがかり、やたら派手に見えるカモ科の水鳥。オシドリは、漢字だと鴛鴦。派手な外見と同様、漢字の場合も、手書きじゃとても書けない画数。写真だと首を引っ込めているからわからないけれど、首をまっすぐにすると頭が妙に大きくて、おまけに頭部の羽のふさふさがよけいに頭部をでかく見せるので、外見のバランスが悪いことこのうえない。歩くと、頭から突っ転ぶんじゃないかと思うくらい。
 と、そんなことはどうでもよくて、オシドリが単体でここにいることが、ともかく不思議。未婚化、晩婚化はオシドリ界にも及んでいるのか。そうじゃなくて、婚活に入る目前だったのか。このとき、彼のまわりには、カルガモやオナガガモがウロウロしていた。ヨソの種族を、自分の仲間と勘違いして一緒に行動しようとしていたのだろうか。‘一人’恥ずかしそうに、いたたまれない感じで、善福寺川を行き来していた。
 ところで、オシドリの未婚化問題を言うより、そもそも善福寺川でオシドリを見かけること自体、先に驚くべきでした。「今日の歓び」というより「今年の冬の悦び」くらいの出来事。渓流とか河川の上流域とか、水がきれいで人があまりいないところにいるといわれている鳥が、住宅地の、細々と流れる善福寺川にいることを素直に喜ぶべきか、「どうしちゃったんだろう」と不安をよぎらせるべきか――。見かけたのは2月4日。その翌日もいたけれど、以降はどこかに飛んでいってしまったもよう。